tomakichiコラム
切削条件と工具寿命の関係
切削お役立ち情報 No.25
さて、これまで切削条件について、お話をしてきましたが、今回は、アプローチを変えて、化学の話をしたいと思います。
全ての物体には、融点・沸点というものがあります。融点は、加熱により、固体が液体になる時の温度です。
沸点は、さらに加熱し、液体が気体になる時の温度です。
わかりやすく言うと、氷(固体)が水(液体)になる時の温度が融点、水(液体)が水蒸気(気体)になる時の温度が沸点です。
先程、「全ての物体には、融点・沸点がある」と言ったように、機械金属加工業で扱う金属にも、融点・沸点は存在します。鉄であれば、融点は1,540°C、沸点は2,750°Cと言われています。鉄を鋳造する際は、炉に入れて、1,500°C以上の高温で熱し、ドロドロに溶けた液体状の鉄を鋳型に流しこんで、形を作ります。 では、鉄以外の金属の融点は、どうでしょうか?金は、1,064°C、アルミニウムは660°C、亜鉛は419°Cと、 金属によってバラバラです。超硬の素材として使われている、タングステンの融点は、3,400°Cと、高硬度であるだけでなく、融点も非常に高い材質であることがわかります。
超硬合金は、タングステンを主成分として作られているため、高温に強いということは、容易に想像できます。 では、超硬合金によって出来た切削工具も温度をどんどん上げて使用しても大丈夫か?というと、そうではありません。 高硬度が最大の長所である超硬合金ですが、いくらでも温度を上げても良いという訳ではないからです。高温になると、硬度が維持出来なくなってしまいます。 |
切削加工で生じた切り屑を観察すると、高温であることがわかります。
これは、刃物も同様で、被削材にぶつかる衝撃や摩擦によって、刃先の温度が上昇していきます。
つまり、切削加工において、休まずワークを加工し続けると、刃先の温度が上がり(固体から液体に近づくため)
刃先は柔らかくなっていくのです。
硬度と刃先の摩耗度合いが関係していることを考えると、刃先寿命の秘密もこの辺りに隠されていそうですが。
続きは次回。 切削による温度上昇と刃先寿命の関係について、さらに詳しくみていきたいと思います。
次回は、「温度上昇と工具寿命の関係」についてです。
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