日の丸ジェット旅客機への思いと次期戦闘機開発への期待・・１.日の丸ジェット旅客機への思い-①-②

Author name
久保 英彦 氏
元防衛省研究所部長、元多摩川精機（株）顧問
株式会社TOSAMACHINE 顧問

１.日の丸ジェット旅客機への思い

 index

① 日の丸ジェット旅客機開発プロジェクト
② 新型コロナの世界的な感染拡大による打撃

① 日の丸ジェット旅客機開発プロジェクト
三菱スペースジェット（MSJ）は、国産旅客機としては、1960年代に開発されたYS11（プロペラ機）以来、ジェット旅客機としては初めて、の国内開発であり、産業界、航空業界始め官民を挙げて期待されている日の丸プロジェクトである。70～90人乗り、航続距離3,600㎞程度クラスの小型機で、複合材などを多く用いて機体を軽くし、空気抵抗を少なくして燃費効率を上げ、環境にも配慮した最新の高性能機の実現を目指している。2008年ごろから、三菱重工業（株）とその100%子会社である三菱航空機により、三菱リージョナルジェット（MRJ）という名称で開発が始まり、当初、初飛行2011年、初号機納入2013年、と予定された。

2014年、初号機（90人乗り）が完成し、米国の航空見本市への出品、パリ航空ショーで実物大のキャビンのモックアップの展示などを経て、2015年11月、初飛行した。

その後、飛行試験フェーズに入り、設計変更等が生じ、2020年初め、納入を2021年以降とする6度目の納期変更が発表された。名称は2019年に三菱スペースジェット（MSJ）に変更されている。当初の予定から8年以上の遅延である。当初1,500億円とされた開発経費は、開発期間が長引いて大きく膨らみ、既に１兆円を超えているとも言われており、三菱重工業本体の経営をも揺るがしかねない問題になってきていた。

② 新型コロナの世界的な感染拡大による打撃
そこに、新型コロナ感染の拡大の問題が発生した。世界的に人々の移動が厳しく制限され、全世界の航空旅客業の需要が急減して、航空会社の経営を圧迫している。日本では2020年度ANA5,100億円、JAL2,700億円の赤字が見込まれている。このために、新規旅客機の需要は瞬時的には実質ゼロにも等しくなり、日の丸ジェット旅客機も一瞬にして市場を見失ってしまった。

そしてついに、2020年10月、開発中の国産ジェット旅客機「三菱スペースジェット（MSJ）」の開発を凍結することが発表された。米国における型式証明を取得するための最小限の活動は継続するらしいが、人員、経費ともに20分の一に削減された。